時刻表の置き忘れに気付いたのは、いわきを出てしばらくした列車の中だった。何とかなるかと植田駅で降りたが、駅員に「次に列車に積んで持ってきてもらえないか」と頼んでも「一切受け付けていない」との答え。JR九州は今年の春、菜の花さがしで、指宿枕崎線の山川駅に置き忘れた僕の旅手帳を隣の指宿駅まで運んでくれたのだが、JR東日本は冷たいと言おうか、トラブルを起こさない為に社訓に忠実と言おうか、冷酷な返答である。
駅備え付けの時刻表で調べたが、取りに戻っていてはこれからの行程に大きな支障を来す。涙を飲んで、ここは時刻表を見捨てる事にした。 |
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疲れていたのだろう。それに尽きる。しかし、ここで時刻表を失って僕は吹っ切れた。ようやく、ここしばらくの忙しない生活の余韻から解き放たれた気がした。結果としてこの時刻表は、異郷の地で我が身を犠牲にしながら、僕に、かけがえのない自由を与えてくれたのだった。
水戸で乗り換え、水郡線に入る。水戸では途中下車がてらに旅行貯金をしてみたが、駅前も何という事はない地方都市だった。
さて、この水郡線は、名前の通り水戸と郡山を結ぶ路線だが、途中の上菅谷から常陸太田への支線が分岐している。まずはこの支線を乗破せねばならない。常陸太田は、常磐線の大甕駅で接続する日立電鉄の終着駅である常北太田駅に接しており、当初は日立電鉄を利用して効率的に水郡線・常磐線を乗破しようと考えていたが、水郡線で乗車予定の列車が季節臨時になってしまった為、敢えなくこの計画はボツとなった。 |
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常陸太田を出て、先程も乗り換えた上菅谷で郡山行きに再び乗り換える。列車は単調な田圃・畑・住宅地の繰り返しの中を走る。車窓が単調な上、単線でロングレール化されていないので、継ぎ目の音が眠気を誘う。良い天気ではあるし起きていようとは思ったが、とうとう常陸大子付近から、水郡線が東北本線と合流する安積永盛の手前までを無意識で過ごした。
郡山の駅前に立つ、建物上層の大きな球体が特徴的なビルを望みながら、水戸出発から4時間余りで水郡線完乗。正確には、一つ手前の安積永盛で水郡線は終点であるからその時点で完乗だが、水郡線の全ての列車は郡山から発着しているし、水『郡』線と言うくらいだからこれでも良いだろう。 |
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郡山では乗り換え時間が5分しか無く、16時31分に発車。朝、いわき駅のうにめしを食って以来飲まず食わずだから既に空腹だったが、これでは駅弁も買えない。でもこの時は、午前中は殆ど寝ていたし、これからは東北本線を北上するんだから大きな駅も多く、また米所だから美味い駅弁が買えるぞ…と思っていたのだが。
次の乗り換えである福島では10分の時間を有効活用できずに買えず、仙台では4分乗り換えの間に改札口まで出て探したが駅弁屋そのものが見付からず、とうとう時刻は19時を回った。
仕方なく、19時40分着から7分間停車の小牛田駅の売店でパンを購入。ついでに、昼間失ったJTB時刻表の一時的な代用として、小型版の時刻表も購入した。 |
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